「波の音が消えるまで」は初心者もバカラ好きも楽しめる小説
最近、バカラのコラムを書きながら思うのですが「バカラのルールや楽しさ」ってやったことが無い人に伝えるのって意外に難しいです。
例えば、バカラのルールであれば
- バンカー、プレイヤーを選ぶ
- 数字がより9に近い方が勝ち
- 勝てば賭け金が2倍、負けたら没収
こう説明できますが、ここから踏み込んで説明しつつ、楽しさを伝えるのはなかなか骨が折れます。
トランプや麻雀などもそうですがルールだけ知っても何も面白く無いんですよね。
- バカラを初めてみたい
- バカラの醍醐味をもっと味わいたい
そんな人におすすめの本があります。
それが沢木耕太郎さんの「波の音が消えるまで」。
ルールブックではなく物語(小説)ですがバカラの基礎的なことから、楽しさや醍醐味、さらには攻略法など全てを味わえる素晴らしい一冊なので紹介します。
初心者にはもちろんですし、バカラ好きの人にとっても、100万円分払ってもいいくらいの価値はあるんじゃないかなぁ。
あらすじ
ぜひ読んで貰いたいので核心部分には触れずに簡単に。
老人が遺した一冊のノート。たった一行だけ書かれた、「波の音が消えるまで」という言葉。1997年6月30日。香港返還の前日に偶然立ち寄ったマカオで、28歳の伊津航平は博打の熱に浮かされる。まるで「運命」に抗うかのように、偶然が支配するバカラに必然を見出そうともがく航平。謎の老人との出会いが、彼をさらなる深みへと誘っていき…。緑の海のようなバカラ台には、人生の極北があった。生きることの最も純粋な形を求めて、その海に男は溺れる。
BOOK「データベース」より
一人の男(伊津航平)がバカラに出会い、必勝法を求めてバカラに溺れ、破滅へと向かっていく。そこに謎の老人や、マカオのカジノには欠かせない娼婦が絡んでくるというハードボイルド風味もあるエンターテイメント小説です。
とにかくすごいのは、上下巻1400ページを越す大作なのにそのほとんどをバカラをする主人公の姿や思考に費やしているところ。
もはやあらすじなど無く(作者に怒られる?)、主人公がバカラにハマる姿が描かれていて、その描写の細かさは自分バカラを追体験しているかのようです。
果たしてバカラに必勝法なんてあるのか?
何度も自問自答しながら主人公がバカラをひたすらやり続ける主人公を追いながら、最後に「波の音が消えるまで」という言葉の意味が分かった時に「感動」すら覚えましたね。
作者は沢木耕太郎さん
作者はノンフィクション作家、写真家、小説家、エッセイストなど様々な肩書きを持つ「沢木耕太郎」さんです。
著書としては深夜特急という紀行小説が有名でこの本は「バックバッカーのバイブル」とも言われ、大沢たかおさん主演でテレビドラマにもなりました。
深夜特急ではもギャンブルをする様は描かれていますし、僕としては
と思っていましたが、過去のインタビューで「やるのはパチンコくらい」で答えているので驚き。
主人公がバカラにハマっていく様とか、考えつく攻略法ってギャンブラーの思考そのものでしたからね。
例えば、バカラは丁半博打ですから「次がバンカーか、プレイヤーか」という予測をします。
その時に本書内では主人公が「タイ(引き分け)が出たら、次は続いてた目と逆が出やすい」とかいう、いわゆる「オカルト」をギャンブラーは持ち出すわけですが、それと同じようなオカルトが無数に出てくるわけです。
これは、バカラを相当やり込んでないと出てこないはず。
なんとなくですが、そういう部分から沢木さんは観察眼がとてつもない方だと感じました。ノンフィクション作家としての鉱石を考えると、人を見つめる能力や、観察する能力が人よりかなり長けているんでしょう。
作者自身、バカラをぶっ続けで1週間くらいプレイしたことはある様です。ただ「波の音が消えるまでには」たった1週間でバカラの深淵を覗いてきたとまで感じられる情報がこの本には詰まっていましたね。
バカラを始めたい人におすすめ
例えばなんですけど、麻雀のルールを知らないと麻雀の本って面白くないですよね。
漫画だったら「アカギ」、小説だったら「麻雀放浪記」は麻雀を知らない人にもその名を轟かせていますが、麻雀をしない人は読まないと思います。なぜなら、ルールが分からないからです。
麻雀は複雑すぎてルールを語るのが難しいところがありますが、そもそもルールを語ると物語の面白さって失われると思うんです。
でも、この「波の音が消えるまで」はルールを説明しながらもその面白さを失っていません。
なぜなら、主人公がバカラを知って観察していく様子が既に興味深いから。
「次はどっちが出るか?」
本来なら2分の1、それ以上、それ以下でもないことを観察し続け、理由づけをしたりああでもないこうでもないと考える部分はまさに僕が考えるギャンブルの醍醐味そのものです。
バカラは自分を成長させる修行と考えている僕ですが、主人公がルールを覚えていく姿にその成長が見られます。
ルールを楽しみながら覚えることが、そこらへんの入門書とは比べ物にならないくらいにできちゃいます。
バカラが好きな人にもおすすめ
バカラのルールも楽しみ方を知っている人にももちろんおすすめできます。
上巻の前半はルールについて細かく書いていたり、実際にプレイするとどの様なことが起こるかを描いていますが、後半に向かうに連れて、バカラについての真剣な考察になっていきます。
バカラに必勝法なんてないんですけど(ないことを証明した人はいませんが)、案外あるんじゃないかなと思わせてくるほどの主人公の観察眼はバカラを実際にプレイするよりも学べる部分があります。
- どんな時に負けたか?
- どんな人が勝っているのか?
- 負けにくい方法はあるのか?
こういう事について主人公が詳細を考えるのですが
「負けた時はいつもノリたくない奴の反対に賭けたから」
「罫線表が一定の形を描く様に目が出ることがある」
「どちらかのツラが続いた後は逆の目が出やすい」
などなど、くだらないことから一理あるということまで考え尽くします。
どんなことでも、馬鹿みたいに研究し尽くす人には絶対に勝てません。
主人公は沢木耕太郎さんの観察眼を持っているんじゃないかと思えるくらい、そこを観察し、思考し、研究していく。
そこにはお金を払うことと同じくらいの気付きがありますよ。
まとめ
「波の音が消えるまで」は初心者も、玄人も楽しめます。
正直、エンターテイメント性で言えばもっとおすすめな本はあります。
例えば、森巣博さんの「賭けるゆえに我あり」なんかは、実際に脳汁が出ちゃうくらい興奮しますし、大王製紙の会長がバカラで破滅するまでを描いた「熔ける」にはエンタメを超えるほどの魅力があります。
しかし「波の音が消えるまでは」は、バカラをこれから始めたい人への誘いと、バカラ好きがより深みにハマる二つの要素を持ち合わせているすごい一冊。
まさにバカラ好きなら必読と自信を持って言えます。
上下巻、文庫本なら3冊セットと大作ではありますが、途中飽きさせない回想なども入っているので思っている以上に簡単に読めますのでご安心ください。
「バカラで勝てない」と悩んでいる人には一種の教科書代わりになるかなぁと思いますよ。
ぜひ読んで感想聞かせてくださいね。
お後が宜しい様で!
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