106億円をカジノで失った人がいる。
こう聞くとまさに漫画の世界みたいだし、漫画でもリアリティが無さ過ぎてつまらないかもしれない。
ただ、現実にその人は存在する。しかも日本人。
その人こそ、大王製紙元会長 井川意高さんだ。
今回は井川さんが大王製紙事件について懺悔の意味で書いた本「熔ける」を読んでみた感想と、間もなく韓国ソウルのカジノで一勝負しようとしている(しかも井川さんが106億円溶かしたバカラで勝負)僕が、ギャンブルの魅力と恐ろしさについてこの本から学んだ事を書いてみるよ!
※多少のネタバレも含むのでご注意くださーい!
大王製紙事件
まずは、大王製紙事件と呼ばれる事になった今回の事件について本書の内容を交えながらまとめてみる。
106億円と言えばサラリーマンの生涯年収50人分以上。
これを全てカジノですってしまったのだから当然大事件。しかし、それが自分のお金だけだったら事件とは呼ばれなかったかもしれない。
井川前会長は、大王製紙の子会社数社から多額の資金を引き出してそのお金でギャンブルをしていた。
引き出していたと言っても、盗んだり横領した訳ではなく「融資」の形をとっていたが、契約書もないままだったというから追求されて当然。本書の中で、借りる時の経緯についても書かれていて、井川さんが電話一本
「投資に使うのでお金を貸して欲しい」
と、子会社の担当者に連絡するだけで、自分の口座に数億から十数億が振り込まれたそうだ。世間的なイメージだと、会社の金を使ってギャンブル三昧という事で、実際その通りだけど、井川さんは大王製紙という日本でもトップを争う製紙会社の会長だった人。
最終的に返済しなければならないとされた55億円を、全額株式を売買するなどして自分のお金で返済している。
最終的には返すつもりだったという事だから、ギャンブルの為に借金を重ねたあげく破産してしまう人とは一線を画している。額も額だけれどここら辺は賞賛に値することだと僕は思うね。
大王製紙は井川さんを刑事事件として告発。特別背任(簡単に言うと役員が会社に損害を与えた)という名目で東京地検も捜査を開始。捜査後、井川さんは逮捕され懲役4年の実刑となり、喜連川社会復帰促進センターに収監された。(2013年6月)
本書【熔ける】の中ではこの事件の経緯について、自分の生い立ちから、ギャンブル中の様子、事件になってしまった自己分析、マスコミの報道に対しての思いなどが書かれていた。その中で、一番印象的だった部分を少し紹介してみる。
井川前会長のギャンブル録
上も書いた通り、本書はギャンブル中の様子だけを書いているものではない。なので、ギャンブルのエンターテイメントの側面を楽しみたい場合は他の本を読んだ方がいいかもしれない。※前に書いた記事で紹介している、森巣博さんとかね。
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井川前会長が106億円を失ったほとんどが「バカラ」という種目だけど、そこに関しては基本的に勝ち負けの報告しかない。それよりもこの本では大王製紙の前会長だからこそできるすごいお金の借り方が印象的だった。
それが、ブラックカードで物を買い、質屋に預けてお金を借りるという方法。
井川前会長は大王製紙の会長という事でブラックカードを複数枚所持していた。ブラックカードは無制限で買い物ができるというが実際そんな事はなく、3000万までの限度があったようで、マカオのカジノで手持ちがなくなってしまうと、3000万円分、ロレックスの派手な時計を購入し、現地の質屋に持ち込みお金に換えていた。
もうここら辺はギャンブル中毒末期の人が行う行動としか言いようがない。桁が違うので逸話になっていまうけれど。しかも、ロレックスの時計を質屋に入れる場合だと45%ほどの保証がなかった為、3000万円分の時計も1500万円ほどの現金にしかならなかったと書かれている。お金を借りるだけで1500万円損する状態でも借りるとは異常の極み。
その時の結果は、6000万円勝利し、質屋から時計を出すと数本はカジノでの付き人に無料であげたというからまたすごい。
このエピソードから分かる通り、井川前会長の金銭感覚は完全に麻痺していたので、2日間徹夜でバカラを打ち続け「20億円の大勝利」をおさめてもなお継続したという一般的には考えられない事が納得できてしまう。
この本の一番面白いところはこのように「数十億の資産がある人間」でもギャンブルの前では一般人と同じという事。
それにしても、豪快というか桁が違いすぎるギャンブル録だった。
井川前会長がはまったギャンブルの魅力
僕もギャンブルが大好きだ。
自分の生涯の買い物を振り返ったこの記事でも
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ギャンブルに550万円近いお金を使っていた事が分かったし、数日後には韓国のカジノで一勝負しようとしている。
もちろん、公営競技やパチンコスロット、カジノも含めて胴元がいるギャンブルでは必ず最終的には負ける様な仕組みになっている事も分かっているつもり。
それでも、なぜギャンブルをやるのか?自分なりの答えを出していたけれど、井川前会長が本書の中で語っていた事とほぼ一緒だった。
それは「ギャンブルで勝利している時の万能感の為」
井川さんの場合、億単位という事で桁が違うが金額の多寡は関係ない。勝利に勝利を積み重ねたり、大負けから起死回生の一撃をおさめた時の高揚感なんかは他の快楽とは比べものにならない。
脳から悪い汁が出ると表現している人もいるけれど、実際にアドレナリンやドーパミンなど興奮物質が実際にドバドバ放出されていると科学でも証明されている。
ギャンブルの魅力は個々の種目により様々だけど、結局は「神様に近づける瞬間」もしくは「神様を越えたと錯覚する瞬間」を味わえる万能感が全てと僕は感じる。
ギャンブルの恐ろしさ
他の何にでも味わえないような興奮や快楽があるけれど、それはそのまま依存性の高さや、脳に及ぼす影響の高さと直結している。
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以前書いた記事でも、ギャンブル依存症に一度なると、脳が変化しなかなか依存から抜けれない状態になってしまう事を書いてある通り、はまってしまうとなかなか抜けれない。
僕自身、パチンコはもうやってないけどカジノに行こうとしているのだから、ギャンブルをしている事に変わりはない。
日本の公営ギャンブルがどれほど、勝てない仕組みになっているかはおいておくとして、上にも書いてある通り、胴元がいるギャンブルはずーっとやり続ければ間違いなく負けるようになっている。
そして、一度負ければそれを取り戻そうとして、深みにはまり、勝っていればさらに勝とうとして賭け続ける。
青天井、底なし沼
それこそがギャンブルの恐ろしさでどこまで行ってもゴールは無いという所が怖い。職業「ギャンブラー」と名乗り、実際にギャンブルで生計をたてている人は、自分にルールと枷を課して生きている。本当にすごい人たちだよね。
ギャンブルは資金力があればあるほど負けにくいとされているけれど、井川前会長は100億円持っていても敗北した。
ギャンブルの前では金額は関係ないと言う事をこの本が教えてくれるよね。
まとめ。人生はギャンブル
「溶ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録」はギャンブルで破滅してしまった井川さんが、ギャンブルに関する貴重な教訓を教えてくれた。
結局は大王製紙を興した井川さん一家は皆会社を去る事になり、自身の資産も大きく減らす事になったが、それでもなんとなく井川さんはまたギャンブルをやるのではないかなと感じた。
事件発覚した後既にカジノは立ち入り禁止になり、アメックスなどのカード会社からもカード利用停止の案内が来ているようだけど、それ以前に、懺悔と言いつつも、一生ギャンブルをやらないとまで反省している様子はなかった。(僕的には良い意味で)
ギャンブルについて書いている森巣博さんの著書
でも書かれているけれど、資本主義に生きるという事は結局、ギャンブルをしている事と変わらない。と僕も思う。株やFXもギャンブルだし、例えば結婚一つにとっても、ギャンブル。選択した結果を予測する事はできても、完全に操る事はできない。
ギャンブルには底なしの恐ろしさもあるし、破滅している人は数知れない。ギャンブルを自らやれば、選択の頻度をあげる事にもなるので、勝ち負けの結果も通常以上にどんどん生まれてくる。
選択を極力減らしてゆっくり生きるか、選択を続け満足するように生きるか、それがギャンブルをやる人とやらない人の違いなのかもしれない。
カジノに行く前に、ギャンブルをする前にそんな大切な事を教えてくれる本書をどうぞ!
お後が宜しいようで!